特集

「松山智一 × 魚住誠一」


 

普段はフォトグラファー対談が多い特集記事、今回は珍しくデザイナーとの対談だ。昨今誰でも気軽にインディーズ写真集が作れる時代、だからこそ考えなくてはならない”ページ構成力”。数多くタレント写真集など手掛けるデザイナー松山智一氏(まつやまのりかず)を迎え、カメラマンとデザイナーの間にある”ページ構成”で考えなくてはならない要素をたっぷり対談していただいた。

  

【写真集デザインの魅力】

:タレント写真集などのデザインを手掛けるようになったキッカケは?
:デザイン事務所でアシスタントを経て独立して、当時広告の仕事がメインだったんですが、出版、特に写真集に興味があったので口コミで「松山がやりたがってる」ってみなさんに広げていただいて(笑)たまたま「男の子の写真集をやりませんか?」とお誘いを受けたのが初めての写真集でした。その作品は写真家渡辺達生さん撮影の写真集「ボクたちの夏休み」(朝日出版社)で、打合せで初めて巨匠にお会いしたんですがそれから次々とお電話いただいて(笑)
:初めて写真集を組むってどういう感じでしたか?
:もちろん初めてだったので試行錯誤、当時はアシスタントもいなかったので要領も悪かったです。自分がアシスタントの頃はカメラマンも同じでしょうけど、作業に追われる毎日で、誰かにデザインの知識を教わるコトなんかほとんどないじゃないですか。教えてもらった以上に自分で気づいていったコトが今の自分を支えているのかも知れません。たとえば写真集を組むのに、もし1,000の知識が必要であったらその1,000を誰かから教わっても到底覚えられないですよね、でも本気になって自分で1,000気づいたとしたらそれは全部自分のモノになります。その頃は常に”気づくコト”を意識していたような気がします。
:写真の見方は広告デザインとはまた違った見方ですよね?
:全然違いますね。今でこそ写真集とかやらせてもらってたくさんカメラマンの方々とお話しする機会もあり考え方も予測できるようになりましたけど。広告デザイン上での写真はいかに被写体を象徴的に見せるかが重要視されるので、例えば都会でアップの女性を撮った写真があるとして、その背景が”森に向かう山道”のような自然風景的イメージが写っていた場合に、もしそこに電柱が写り込んでいたら「その電柱なんで切らないの?」ってなりますよね、その余計な情報を削除して主題をより象徴的に見せる考え方が一般的なので。でも別の考え方をすれば自然風景的だけどそこに電柱が写ってるからこそ都会なんだなっていう情報も得られるしそこに「恵比寿○○」なんて看板があればさらに情報量も増えてきますよね。森に向かう山道なんだっていう漠然とした情報よりもそう見えるかもしれないけど実は違ってもっといろんなコトがそこに隠されている、そこにも写真の面白さがあるように思います。
:なるほど。写真素材を受け取ってからページに組んでいくまでどういう行程を踏んでいきますか?
:当然ボクらは写真のコトについてカメラマンより知識がないわけだから、素材を受け取った以降の”この瞬間”、”このありよう”しかボクらにはなくて、そこを最大限に五感で見るしかないんです。そこで気づいたコトとか目に映るリズムみたいなコトでやるしかない。考え方としては、素材を受け取ったこの瞬間からの情報は”誰よりもボクが一番見てる”っていうつもりでやっています。

 

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