特集

「ファインアートプリント × 魚住誠一」


■ ファインアートにおけるポートレート専科の役割とは?
:ポートレート専科に出品するような方は、プリントに対しても意識が高い方が多いんじゃないですか?
:いや、中には何人かいますけど、まだそうでもない方が多いです。
:そうですか?私たちがポートレート専科に関わるようになって4年になりますけど、以前は単にモデルが可愛いとか、ちゃんとピントが合っているっていうレベルで作品が成立していたようなところがあったように思います。最近は見せ方を研究するようになった方も増えたと感じていますけど。
:もともとポートレート専科って見せ方を意識させるイベントでした。「プロなら展示する作品で見せてみろよ」ってことで、ギャラリーを借りてスタートしたんです。ところが蓋を開けてみたらほとんどプロがいなかった。展示の仕方も分からない、それが第一回目でした。だからオーディションを採用することにしたんです。
:そうだったんですか!
:写真を撮るだけでは気付かなかったコト、展示することで見えてくるものがたくさんあるわけです。もっと大きくプリントしなきゃいけなかったとか、用紙と作品のイメージが合っているのかとか。
:そうですよね。サイズや用紙の選択や額装によっても作品の印象はずいぶん印象が違ってきますからね。
:最初の展示ではインクジェットプリントの出力をピンで留めただけっていうのもありました。それが作品のイメージに合っていればいいんですけれど、そうじゃないものもありましたからね。今ではプリントのサイズも用紙の種類も様々です。撮った作品をどう見せたらいいのかということまで考えて作り込んでいる作品というのが少しずつ増えてはいますね。
:どうやって表現したいのかが分かってきた人が増えてきたってことでしょうか?
:ポートレートって“撮ることが楽しい面“ってあるじゃないですか。モデルと仲良くなることができても写真が上手くなるわけじゃない。撮るコトのその次、その先に到達できて、本当のポートレートの面白さが分かることがあるんだと思うんです。展示することで見えてくるもの、それを自分の作品作りにフィードバックしていくことができてきたと思いますよ。
:他の人と違う表現をしたい、もっと上のレベルを目指したいという人が出てきたってことですよね。そういう意味でポートレート専科は、ポートレートの可能性を示す刺激的なイベントだと思うんです。新しい写真の方向性が見えて来るような気がして。その部分に期待しています。

 

■日本でファインアートがブレイクする日も近い!?
:写真を撮る方なら、自分で表現したい色を持っていると思うんです。世の中にたくさんある用紙は、それぞれ違う特性を持っている。それを知ってプリントすることを楽しんでもらいたいと思うんです。それが、将来のファインアートプリントに繋がるんじゃないかと考えています。
:最終的にこういう色で表現したいと考えたら、モニターで見たのと同じ色でプリントできなきゃいけない。そうなると、測色器は必要なツールですよね。
:そうです。感覚的に出力するのではなく、きちんとデータを数値化して、その数値に基づいてプリントすることができなきゃいけないと思うんです。あとはこういった知識の必要性をどこで気がついて、いつ始めるかじゃないでしょうか。

 

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