特集

「ファインアートプリント × 魚住誠一」


 

ファインアートプリントとはアート作品として認められた、販売することを目的に制作されるハイクオリティのプリントのコト。日本では写真を売買するアートマーケットがないため馴染みが薄いかもしれないが、最近写真業界でよく耳にするようになってきた。日本でファインアートプリントの啓蒙活動を行っているエックスライト社の冨川丈司氏(営業部担当部長)とブリンジャー紀子氏(マーケティングマネージャー)とともに、ポートレートとファインアートについて魚住誠一が語った。

 

■日本のファインアートプリントの現状

:このところファインアートプリントがちょっとしたブームになっているような印象があるんですけれど、魚住さんの周りではどうですか?
:そうですね、あちこちで聞くようになりました。ですが、本当にファインアートを分かっている人っていうのは、まだ少ないように思います。
:どういうことでしょう?
:ポートレートで言うと、目線を外した情景的な作品を画材紙やアート紙に出力しただけのプリントをファインアートプリントだと思っているような方がけっこう多いんです。
:ファインアートってそういうものじゃないですよね。プリントでしっかりと作品に作家の意志が込められていて、初めてファインアート呼べるんじゃないでしょうか。しかも写真を売買するアートマーケットの中で認められた、クオリティの高いプリントがファインアートプリントであるべきです。
:そういうファインアートの本質を知らずに、自分の作品はファインアートだと言っている方が少なくない。和紙にプリントしてあればそれがファインアートプリントだと思っているような方が、ポートレートをやっている方の中にまだまだ多いように思います。
:そもそも日本には、写真のアートマーケットがないですからね。
:ファインアートプリントに真剣に取り組んでいる写真家の方って、そうした海外の写真事情を知ったほんの一握りの作家たちですよね。だから私たちもファインアートプリントに対する日本の写真家の方々の意識を少しでも変えられればと考えています。
:イメージ通りのプリントを作ろうと思ったら、モニターとプリンターのカラーマッチングができていないといけないわけですよね。そのためにはきちんと測色器を使って測色して、紙に合ったプロファイルを使ってプリントする。それがファインアートプリントを作るための最低限のレベルだと思うんです。だけどそれができていない方がまだまだ多い。残念なことですが、それが今の日本の写真の現実なんじゃないですかね。
:海外の写真作家の方っていうのは、プリントについて実によく勉強しています。そういったことができていなければ、ファインアートプリントとは名乗れないわけですから。だからそれこそ1枚が数千万円というようなファインアートプリントがしっかり売れるんですけどね。
:そうですよね。そんなトップレベルの作家の方々がメジャーリーグの選手だとすれば、我々のプリントはまだ草野球のレベルなのかも知れない。もちろん個人でコツコツと調べてやっている作家の方はいるけれどそれはほんの一握り。多くの写真家はまだ硬式球にも触っていないレベルなんじゃないのかな。それほどファインアートの世界に縁遠いのが今の日本の現実だと思うんです。
:そうかもしれませんね。
:これからの日本を写真文化を考えると、誰かが海外のファインアートの世界をきちんと見せてあげなきゃいけないと思うんです。草野球をやっている少年に、「これがメジャーリーグのスタジアムだぞ、いつかここに立ってみろよ」っていうみたいに。日本の中で写真展をやって、それで満足しているだけじゃダメなんです。

 

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